はじめに

美術作家の浅水康介と申します。以下、簡単な私の略歴になります。意識的に絵画を制作することと向き合い、かつそれを実際的な意義のある何らかの行動にうつしたのは、2011年、油絵具の使用方法もよくわからない状態で(たぶん、ほとんど気力と感覚だけで)描いたF100号(162×130.3㎝)の作品で、第85回国展に初出品初入選できたことがはじまりであったのかもしれません。絵画の公募展は世の中にたくさんありますが、第三者の鑑査を経てパブリックなスペースで自作が展示される、という経験も、そのときがはじめてでした。それ以前にも絵を描くことはありましたが、「報われない涙」の量が多いであろう世界に積極的に飛び込む気力がなかなか内面からこみ上げてはこなかったのです。例えばスポーツ選手で、「練習が好きで好きで仕方がない」という人はいないとおもうんです。それを引き合いに出して、私自身の内面の心境をスケッチした言葉を発するのもおこがましいのですが、どんなにくだけた明るい絵を描いているときでさえも、ある一定の痛みないし精神的な負荷は必ず伴います。でも、「描くという行為を通して想像力をカタチとして創造できるかもしれない」という可能性のなかに、それらに屈しない意味が含まれているからこそきっと描きつづけてこられたのでしょう。私のしようとしていることは「作品の印象に力点を置く」 ことですし、そこに複雑な概念を混入させ...